殺人者はいかに誕生したか |
デュルケムは、社会構造論を論じた『社会学的方法の規準』(1895)において、「犯罪は健康な社会の不可欠な一部をなしている」「社会の健全な機能にとって犯罪は有用である」と述べた。彼の考え方によると、犯罪とはいえ、それは絶対的な悪というものではなく、ある社会においては「悪」とみなされるというにすぎない。規則があるから「逸脱」ということがあり、善悪の基準があるから「悪」というものが存在する。別の規則や別の基準を持つ社会であれば、それは逸脱でも悪でもないかもしれない。したがって、悪や犯罪は、それ自体が何か固有の性質をもつ行為ではなく、社会の側に存在する規則や基準によってそうであると認定されたものであるにすぎない。犯罪心理学/大渕憲一箸