魔性の熟女、敗れる。 |
アルベール・カミュ「シーシュポスの神話」より。
かれがひとりの女からはなれるのは、その女をもはや欲しないからでは断じてない。美しい女はつねに欲望をそそるものだ。かれがひとりの女からはなれるのは、もうひとりの女を欲しているからだ。そう、これはけっして同じことではない。妻の友人Tちゃんは、自称“魔性の女”だ。Tちゃんなどと呼ばれているが42歳の“魔性の熟女”だ。何故自称かと言うと、Tちゃんのどこをどう見ても、微に入り細を穿って眺めても、重箱の隅をつつき過ぎて箸が折れちゃうぐらいつつても“魔性”性など出てこないからである。
では何故Tちゃんは自分を魔性の女だと勘違いしてしまっているのか?。それは、男に言われたヒトコトヒトコトを本気にしているからだ。
何度も書いているが、男はヤルためなら何でもするし、嘘八百を並べる。
「オマエに捨てられたら俺は生きていけない」「オマエだけが俺の全てだ」「愛し過ぎて気が狂いそうだ」「最高の女だ。俺の女神だ」etc…
普通こんな言葉、信じない。信じないというより、恥ずかしい。お尻の穴がむずむずしてきちゃう。こんなことを言うぐらいなら私はオナニーで我慢する。「愛し過ぎて狂いそうだ」などと面と向かって言う男がいるということも信じられない。
しかし、Tちゃんは信じてしまう。(面と向かってそんなことを言われたら、私は笑ってしまうがTちゃんは)全面的に信じてしまう。そして「私って罪な女ね」とか悦に入ってしまう(痛い)。痛いが本気だ。本気で「私って罪な女。魔性の女」と、思ってしまうのだ。
、、、42歳にもなって男のこんな言葉を信じて悦に入っているなんてちょっとタリナイじゃないかと思う。
さて、現在Tちゃんは妻子ある2人の男性と不倫中である。以前もう1人いて、3人の男性と同時多発不倫中だった頃、妻に「やっぱあそこは太い方が断然いい。3人としてるとよく分かる」などと言っていた。、、、現在の不倫相手は、社内不倫1人とバーでナンパされたおじさん1人だ。太いのは社内不倫の相手だ。自然淘汰というか、弱肉強食というか、太いもの勝ちなのである。きっと今年は西南西を向いてフェラチオをしていることであろう。、、、そのぐらい太いらしい。
Tちゃんは総務部で新入社員の世話係をしている。先日、入社2~3年目の社員を集めての飲み会があった。皆が酔い始めた頃、1人の新人の隣りに座っていたTちゃん、その新人女子社員(21歳)から「○課長のことが大好きで」と、打ち明けられた。その○課長こそ、Tちゃんの不倫相手なのだが。
最初はその女子社員の片思いだと思って聞いていたのだが、「最近は週に2~3回会っている」などと聞くに至って(私より多いじゃん会う回数とかに至って)、、、
T「チューぐらいしちゃったの?」
新人「え~。毎回じゃないけど、(セックスも)してます」
みたいな話にまでなり、ベロンベロンに酔った新人に全てを自白させ(勝手にしゃべったという説もある)、トイレで吐いている間に携帯のメールをチェックし、自分へのメールと同じように「おやすみハニー」などと甘ったるいメールの数々を発見した。(しつこいようだがたとえ親子でも夫婦でも恋人でもダメですから、他人のメールを盗み見するのは。しかもこの場合恋人が他の女へ宛てたラブメールで、より見ちゃいけない度は高いと思うのです。富士山の8合目、3250mぐらいな高さだと思うのです。許されない領域。言い訳できない、なんなら犯罪とすら言えると思うのです)。
そんな陳腐な昼ドラみたいな経験をしたTちゃん、そりゃやっぱり、○課長を問い詰めたわけである。
すると、、、なんということでしょう(←加藤みどりで)。逆ギレされちゃいました。
今まで、「オマエに捨てられたら俺は生きていけない」「オマエだけが俺の全てだ」「愛し過ぎて気が狂いそうだ」「最高の女だ。俺の女神だ」などと言っていた○課長に「最低の女だ」「オマエのこういうところ(具体的には省略)がずぅーーーーーーーと嫌だった」「ヴィッチ」「バイタ」「クソババァー」みたいな感じで。
逆ギレされ、罵詈雑言を浴びせられた挙句、振られちゃいました。
問い詰めて、文句言って、振るつもりだったのに、逆ギレで動転し、反撃する間もなく振られちゃいました。
ダブルスコアー。21歳 vs 42歳。○課長は若い肉体に溺れていた。
、、、、、これでTちゃんが自らの魔性性に多少の疑問をもってくれれば良いのであるが、、、。「この私が振られるなんて」とか言っていたらしい。どこまでも勘違いが続く(自称)魔性な熟女なのであった。
More
私が“魔性の女”で想起するのは、Charlotte Rampling 。画像はヘルムート・ニュートンが撮影したシャーロット・ランプリング。澁澤龍彦「裸婦の中の裸婦」(文春文庫)にある。